MERS、正しく恐れる 専門家「一気に広がるウイルスではない」

かんこく
 
新種の感染症「MERSコロナウイルス」が韓国で広がっていることを受け、日本国内でも感染が広がらないか不安が高まっている。

韓国とは地理的に近く往来者が多いため、厚生労働省は検疫所や全国の自治体に注意喚起して対策を強化。専門家は「仮に国内で感染者が出ても、一気に不特定多数に広がるウイルスではない」として正しく恐れるよう呼びかけている。

 MERSコロナウイルスは2012年に中東で発見された。一般的な風邪ウイルスとして知られるコロナウイルスの新種による感染症で、熱やせき、重い肺炎などを引き起こす。ヒトコブラクダから人に感染するとされ、医療関係者や家族ら患者と濃厚に接触した人にも感染が確認されている。世界保健機関(WHO)によると、1日までに世界で1154人の感染者が出ており、少なくとも434人が死亡。高齢者や、糖尿病や心臓病などの慢性疾患を持つ人は重症化しやすく、致死率は4割近い。

 韓国では、中東に滞在した男性が帰国後に発症。この男性の家族や、男性が入院していた医療機関のスタッフ、患者らに広がった。これまでも中東などで患者の家族や医療関係者に感染が広がった例はあったが、今回はかなりの人数だ。

 国立感染症研究所ウイルス第3部の松山州徳(しゅうとく)室長は「1人の患者を起点として広がった数としては多い」と指摘する。感染が広がった理由は「最初に感染した患者のせきやくしゃみなどの症状が激しかったのではないか」と推測。ウイルスが人から人へ感染しやすいタイプに変異した可能性は考えにくいという。

 ただ、これまでの流行地だった中東と異なり、韓国と日本の往来者は多い。今後、日本でも感染が広がる恐れがあるが、「韓国では患者に接触した人の大半が把握され、隔離されている」(松山室長)ため、感染者や感染者と接触した人が日本に入国、帰国して日本に感染が広がる可能性は低いとする。仮に感染者が確認されても、季節性インフルエンザのように空気感染で一気に広がる恐れはない。

 厚労省は、全国の地方衛生研究所などにMERSの感染を確認できる検査キットを配布。仮に感染が確認された場合は、指定された医療機関に入院して治療を受けるよう、体制を整えている。

http://news.infoseek.co.jp/article/sankein_sk220150604080/